会津への道

3:中三依温泉


(昔話)・・親抱きの松



〜湯西川温泉駅・・中三依温泉・・中三依駅〜


 2日間続いた晴天は曇り空にかわり、午後になると雨が降る予報だ。

朝飯は部屋食で昔のお膳で出て来た。雨かと勘違いさせた沢がザーアザーアと流れていた。

 

 宿の女将が綺麗なモミジがあるからと案内された部屋の前に真っ赤なモミジがあった。

「ここだけは赤くなるんですよ。今年の紅葉はもう終わりでしょう。いつもは山の上まで赤くなるんですがねえ。」

 

 バスは秋になった山々と湖の間を走り、トンネルを出た時は眠気が覚める美しさだ。

山々は植林をしていないので、山全体が落葉樹で覆われ、全てで秋の終わりを告げていた。

 紅葉で山全体がみかん色に霞み、樹木たちは輝く大地の色を葉に運んでいるのだろうか。

麓では赤く染まったモミジ、全身が黄金色のイチョウが緑の木立に囲まれていた。

 

 歩いたり、立ち止まったりして赤く色づいたモミジを見つけたりしたが、走り去る車では紅葉を見ないで灰色の道路だけを見ているのか。それとも脇見運転して紅葉を探しているのか。

 

 森の街道をゆくと丸太作りの建物に「そば処」の看板、栃木県名物の「ちたけきのこソバ」に挑戦したが、キノコは極細ソバに隠れたのか、それともナスに化けたのかな。

 店先の広場は数日すると真っ赤なモミジになり、ここから先にもモミジの絶景があるとのこと。まだ緑の街道は山の間の流れに削られた谷に沿って続いた。

 

 どうやら集落だ。山の幸直売センターの看板に引き込まれて店内に、女将はコタツにいた。早速、お茶と漬物が出てきて長話が続いた。街道歩きならこの人がいましたよ、と机に並べた沢山の名刺の中から街道研究家と称する方と街道交流会の名刺が出て来た。

 

 予定より早めに中三依駅に着き、電車はまだ来ないので、駅近くの温泉に浸かり時間稼ぎだ。

浴室に時計がないことに気づいた。

 

 駅までは数分で戻り電車が来る寸前に連れが財布のないと大慌てで温泉に向かった。息を切らして駅に戻った時は電車の姿はもうない。次の電車は一時間後だ。

 

 何にもないホームの待合室では体は冷えてきたし、街道で見かけた珈琲屋へ避難した。

暖かなストーブと陶器の茶碗が並べてあり、カウンタに石臼が供えてあった。優雅な老後を楽しんでいる老夫婦が、娘さんから教えられたコーヒーを提供しているとか。

 街の有力者のようで、ここは限界集落になってしまい、以前は炭焼きが中心で3千人はいたが、今はわずかしかいないようだ。

 

 時間は十分あるし、話は旅先で値引き役をしたとか、コーヒー豆を石臼で挽く美味しくなるので九州から買ったとか、花で飾ったお盆のコーヒーは温くなっていた。

 

 旅の初めに予定した時刻の電車に乗り、暗い雨の中を今市駅で乗り換えだ。

2017/10/28


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