〜JR日光線・今市駅
・・会津西街道杉並木
・・東武鬼怒川線・大桑駅・・鬼怒川公園駅・・
・・(泊)
セッコクの花
今市駅から大谷川の橋を渡り、自動車道路と別れて杉並木の道に入った。
車が時々通り過ぎる程度で、車道と並走する日光街道の杉並木と比べると静かな道である。
杉の巨木を眺めていたお婆さんだ。「猿でもいるのですか。」と尋ねると。「台風の風で落ちたランがあるか探しているんだよ。ランは杉の枝の間にあって白やピンクの花が咲くよ。」
「朝早くに来た人たちが持っていったようだね。家で鉢植えにしてるよ。」
調べると着生ラン(セッコク)で春先に杉の幹付近に咲いて、いい香りがするらしい。
ランが杉の根元か側溝に落ちていないか探しながら行くと、自動車学校の玄関先で山を見つめている人に出会えた。校長さんのようだ。
「どこに行くんだい。お茶でも飲んでゆかないか。」喉が渇いていたので遠慮なくお願いすると玄関の自動販売機から暖かいお茶を2缶買って来た。「お金持ちですね。」「小銭持ちだよ。」
「あの山は火山で今でも蒸気を吹いているよ。鬼怒川は左の裾で、あそこまで歩くんかい。」
すばらく話が続いてしまった。
歩道は徐々に上り坂になり、自動車道路と街道は別れて鬼怒川の両岸を北に向かい、その間を東武鬼怒川線の電車が走っている。
東武ワールドスクウェア駅の正面が公園で、ここは長年不便な場所だったようだ。
鬼怒川温泉の街に入る前に道は二手に別れ街道は狭くて木に覆われた暗い道になる。すぐそばを電車が走り、それに沿った旅館のほとんどは廃屋化していて、窓はやぶれて、錆が浮かんでいる。無人化した建物の間から華やかに灯る大型ホテルが望められる。
駐車場などの設備の遅れが廃墟を作ったのだろうか。
鬼怒川公園駅が今日の終点、電車で4km先の公園駅に戻るが、電車は20分後になる。すぐに来るのは特急で公園駅には止まらないだろうか、駅員に尋ねると「止まりますよ。」
「切符を買って乗ってください。」電車の音がした。乗れるだろうか。それっと急いだが下り電車を待ってしばらくの間停車していた。
駅の近くにホテルがあった。温泉付きのマンションだったようで、フロントは近所のおじさんか。ぬるい露天風呂に浸かり、仁王像の照明で星が見えない宿であった。
2017/10/26